(2) 先進材料創製の研究

イオン工学的新材料の創製(具体例)

 高度情報化時代におけるデバイス製作では、益々高密度化、高集積化が要求されています。また、材料については材料自身の性質のみならず、その表面・界面も原子レベルで制御した高機能材料の創製が要求されています。その中で、環境・バイオ時代への対応も考えて、具体例として新しい水利用技術の開発や医用材料の創製に関する研究について紹介します。

概要

 水は生体内や地球上で最も多量に存在する液体であり、生命や地球環境にとって必要不可欠な物質であります。そのため、人為的あるいは自然発生的要因による水汚染を防止し、「良質な水資源の保全」は重要な環境問題のひとつとして取り上げられています。また、水は、最もありふれた物質でありながら、他の液体に比べて融点(0℃)や沸点(100℃)が高く、多くの特異的な性質を持っています。例えば、生体内や自然界の水はクラスター構造を形成していて、水素結合の仕方やクラスターサイズによって溶媒としての水の性質が変わることが報告されており、理学・工学・農学・薬学など様々な分野で注目されています。こうした水クラスターのサイズや構造を制御した新しい水の生成と利用に関する研究を行っています。

 さらに、これまでに経験したことない高齢化社会を迎える中で、患者のQOL(Quality of Life)を向上させ、その早期社会復帰を促すための先進医用材料の開発が益々重要となっています。また、種々の病気の治療にあたっては、患者の負担をできるだけ軽減する「低侵襲治療」が求められています。この低侵襲治療を可能とする医用材料として、骨と結合する人工骨などが挙げられます。また、近年、医用材料の表面特性(例えばナノ構造)が生体反応に与える影響が注目されており、高機能な医用材料の創製には生命現象と材料表面との相互作用の解明が必要となっています。その中で、当研究室では骨類似アパタイトに着目し、イオンビームで表面改質したチタンなどの金属基板、セラミックス基板、高分子基板上にアパタイト膜形成を行ったりしています。特に、擬似体液中におけるイオンの振る舞いを制御して、生体内の形成速度の100倍以上の速さで均一で付着力の優れたアパタイト薄膜の作製に成功しています。(図5参照

図5: アパタイトが形成されたチタンメッシュ
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